気候変動の影響で、北極のトナカイが絶滅の危機カナダの北極海西部の島々に生息するピアリーカリブー(トナカイとも呼ばれる)が大幅に激減していることが、最近の生息数調査で明らかになった。このようなカリブーの個体数の減少は気候変動による影響の可能性があると示唆されている。背景資料[カリブーと気候変動]
RELEASE ENERGY 1998.10.20

気候変動の影響で、北極のトナカイが絶滅の危機
カナダの北極海西部の島々に生息するピアリーカリブー(トナカイとも呼ばれる)が大幅に激減していることが、最近の生息数調査で明らかになった。このようなカリブーの個体数の減少は気候変動による影響の可能性があると示唆されている。

背景資料[カリブーと気候変動]

カナダの科学者アン・グン博士(Dr Ann Gunn)は、ピアリーカリブーの個体数が、驚くべきことに95%も減少していると報告している。このように次々にカリブーが死んでいくのは、気温上昇と降雪量の増加が招いた、広大な北極の野生生物減少の始まりなのかもしれない。
ピアリーカリブーは、いくつかの北極の島々にだけ限定されて生息するカリブーという北極の高緯度地域の亜種である。

「まもなく到来する冬が、ピアリーカリブーを絶滅の危機へと脅かす」とグン博士は北極の高緯度にあるカナダのバサースト島(Bathurst Island)の研究所で述べている。
「カリブーが減少したことは、明白だ。問題が冬と関連していることも、明白だ。1990年カリブーの個体数は、3,000頭には満たなかったが、上昇傾向にあった。しかし去年の概算では75頭であった」
グン博士の研究によると、カナダの北極海西部の島々に生息するピアリーカリブーの個体数は、1961年の24,320頭から1997年の1,100頭にまで減少し、この36年で95%以上減少したことになる。*1

温室効果ガスの放出による気候変動が、特に通常乾燥している北極の積雪量を増加させる、と科学者らは以前から予想してきた。結果として冬期にはより深く雪が積もる、と多くの研究は示唆している。

グン博士は、
「気温の上昇傾向が30年から40年ほど続いている。雪が降って深く積もると、気温は暖かくなる。激しい風が吹き、雪が固まる。するとカリブーは、食べるものを得ようとして雪を掘るためにあまりに多くのエネルギーを費やし、そして使い果たし、死んでしまう」
と述べている。

ピアリーカリブーの減少についての最も適切な説明は、深く降り積もった雪のために、彼らの大切な冬の食糧を得ることが困難になっている、ということである。北極の野生生物の生息数における調査で、ピアリーカリブーの減少は、地球規模の気候変動と関係が明らかになった、最初の顕著な例と言える。

世界一流の気候学者2,500人で構成されている気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動がピアリーカリブーの絶滅の原因となる可能性があるとすでに警告している。最近の生息数の統計は、この予想が悲劇的にも、既に現実のものとなろうとしていることを示唆することになってしまった。*2
ピアリーカリブーの減少によって、他のカリブー亜種やすべての北極の野生生物が気候変動の影響の前で脆弱であることが明らかになった。

北西カナダとアラスカ東部のグウィッチン(Gwichi’in)の人々は、生活面でポーキュパイン・カリブー(Porcupine Caribou)の群れに極端に依存している。ポーキュパイン・カリブーの群れは、ピアリーカリブーの群れの南東数百マイルに広がっている。
ピアリーカリブーを激減させた変化が、今度は16万頭現存するポーキュパイン・カリブーの群れに同じ影響をもたらすかもしれない。
さらにポーキュパイン・カリブーの群れは、北極の気候変化の影響ばかりでなく、アラスカのノーススロープにある巨大なプルードベイ石油コンプレックスから北と東に広がる石油とガス開発の拡大の可能性からも、また、脅かされている。

国際環境保護団体グリーンピースは、気候変動と闘う最初の一歩として、世界的な化石燃料の開発拡大の中止を要求する。特にアラスカ北極海沿岸ボーフォート海沖での油田開発、たとえば英国石油(BP)のノーススター計画などの拡大を止めることに焦点を絞っている。

ポーキュパイン・カリブーの将来もまた、危惧すべき状況である。
それは、彼らの生息場所のど真ん中で開発を行ないたがっているBPのような、石油会社からの目前の脅威に直面しているというだけではない。夏は昆虫の増加による被害、冬はより過酷な天候などの、気候変動という長期的な脅威にも直面しているからである。

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