【解説資料】BNFLの「品質」ミス:福井に迫り来る惨事
RELEASE ENERGY 1999.09.21

【解説資料】

BNFLの「品質」ミス:福井に迫り来る惨事

「データ捏造:この問題の核心にあるのは安全性の問題ではなく、単に品質保証の問題だけだ」BNFL、1999年9月15日

BNFLが関西電力用に危険なMOXペレットを作り、品質確認データを捏造さえしたということが明るみにでたが、これは、BNFLについて、そして、その惨憺たる状態のセラフィールド核施設についての知識と経験を持つものにとっては、驚くに値しない。
BNFLは否定しているが、仕様を満たさないMOXペレットの製造はまぎれもなく安全性にかかわる問題である。そして、福井の人々は、日本の発電用原子炉に装荷されるものとしてはぼぼ間違いなくもっとも危険なものとなるこの燃料を受け入れる側に立つ可能性があるのである。

プルトニウムの生産には、プルトニウムの持つ危険性を考えれば、高度な精密工学、高い水準の品質管理の経歴、安全な労働慣行への取り組みなどが必要である。BNFLは、そのどれをも欠いている。
BNFLは、高浜原子力発電所に9月27日に到着予定のプルトニウム燃料は、先週英国の全国紙が明らかにした問題の影響は受けないといっているが、グリーンピースは、このような請け合いを信用することはできない。

私達は、関西電力、通産省、それにとりわけ福井県の県民もこれを信用すべきでないと考える。

セラフィールドのプルトニウム施設:英国のチェルノブイリ

BNFLの、そして、英国でもっとも汚染された核施設—–英国北部に位置するセラフィールド再処理施設—–の環境問題の歴史をリストにする時間はとてもない。セラフィールドの再処理工場の事故の歴史の要約をこのブリーフィングの最後に添付しておく。
しかし、セラフィールドで行われた軍事用および商業用の両方の目的のためのプルトニウム再処理の直接の結果として、周辺の田園地帯の核汚染が驚くべきレベルに達していることは指摘しておくべきだろう。

2年ほど前に、大気中に放出された核廃棄物による汚染のひどさのために、700羽もの野生の鳩が核廃棄物として分類され、処分された。これらの鳩は、今では、近くのドリッグ低レベル核廃棄物処分場に埋められており、永遠にそこにとどまることになっている。

1988年にグリーンピースがサンプリングを実施し、ドイツのブレーメン大学が分析を行なった調査の結果、セラフィールドの半径15km以内の地域のセシウムとプルトニウムのレベルは、ウクライナのチェルノブイリ原発の周辺の居住禁止区域のものに匹敵するものであり、実際、ほとんどの場合には、それより高いことが判明した。
この汚染は、日本から来たものをも含め、使用済み燃料を再処理した直接の結果によるものである。

労働者やその家族の健康、そしてセラフィールド施設の何十kmもの地域の環境でさえこのように軽視する会社は、地球の反対側の何万kmも離れた日本の原子炉に間もなく装荷されることになっているその危険なプルトニウム燃料が環境に与える影響に関心を持つはずがない。

BNFL、そしてそれを支える英国政府の目的は一つである。疲弊した国営会社の将来を守ろうとする最後の試みとして、日本の電力会社との間で高価なプルトニウムMOX燃料の契約を確保することである。

セラフィールドでのMOX生産

セラフィールドには、MOX製造プラントが二つある。一つは、MOX実証施設(MDF)、もう一つは、新しく作られたセラフィールドMOX工場(SMP)で、こちらはまだ運転を開始していない。関西電力のために作られた燃料—–つまり、今回の仕様違反・データ捏造スキャンダルの中核をなすもの—–は、MDFで作られたものである。

1970年に運転を開始したこの施設は、当時、英国原子力庁(UKAEA)燃料サービス・プラントと呼ばれ、年間4トンの製造能力を持っていた。そこで作られるプルトニウムMOX燃料は、英国の高速増殖炉計画のためのものだった。
英国は、その後、その高速増殖炉計画を中止し、このプラントは、1989年に運転停止となった。だが、プラントは、1990年初頭には、BNFLの施設として、年間8トンの生産能力に増強され、1993年に運転が開始された。

1990年代初頭の改修にも関わらず、この施設は、最新式のプルトニウム成形加工施設とは言えない。
BNFLによると、MDFは、「BNFLのショート・バインダレス・ルート(SBR)を使ってMOX燃料を製造し、SMPの運転に役立つような品質や品質保証・品質管理の基準の経験を得るため」のものだたった。
「プラントの運転は、これらの目的をすべて果たし、ヨーロッパの原子炉で照射されている高品質の燃料や、近い将来に日本に輸送されることになっている燃料を提供している」(BNFL/コジェマ/海外再処理会社「MOX燃料のヨーロッパから日本への輸送」インフォメーション・ファイル、1999年6月)

5億ドルの費用をかけた新しいプラントSMPにも、同じ製造技術が組み入れられており、セラフィールドの今回のスキャンダルは、SMPで将来作られるMOX燃料の品質についても確信を持たせるものではない。

プルトニウム燃料の生産

MOX燃料生産の信頼性と品質は、高いものとは言いがたいという点を指摘しておかねばならない。実際、ベルギーのP0やフランスのメロックス工場を初め、現在ヨーロッパで運転されているMOX工場のすべてにおいて、不良品の率は、20~30%となっている。つまり、10トンのプルトニウムMOXを作ると、3トンもが基準を満たせず、その一部は—–ときには50%に達する—–スクラップとして処分され、残りは製造工程に戻される。

さらに、ヨーロッパのすべての工場で、共通の品質管理基準が使われている。したがって、セラフィールドで先週注目を浴びた品質管理の失敗は、ベルギーのP0工場にも存在すると考えてよい。ここは、東京電力の福島原子力発電所用のMOX燃料を製造したプラントである。東京電力の担当者がベルギーの工場に数日以内に到着することになっている。

生産工程

BNFLによる関西電力のためのプルトニウムMOX燃料の生産は、いくつもの重要な段階を必要とする。そのどれに問題があっても、欠陥製品の製造につながる可能性がある。

BNFLのMDFプラントの運転マネージャーは、その製造過程を「ケーキを作る」ようなものと呼んでいる。このような比較の仕方は、プルトニウム酸化物とウラン酸化物の均一な混合物を作る複雑で危険な過程を説明するというより、BNFLの仕事に対する姿勢に真剣さが欠けていることを示すものとなっている。

一連の工程の中で、BNFLが品質の保証のできていないことの明らかな工程がいくつもある。

MDFの混合工程(二酸化ウランと二酸化プルトニウムがアトリター・ミル <高エネルギー混合粉砕器> に入れられる)は、重要な工程である。ここで、酸化物の混合物が粉砕され、細かいよく混ざった二酸化ウラン・二酸化プルトニウムの粉となり、次のスフェロダイザー(造粒器)に送られる。この容器のような型の混合器は、粉砕された粉をかき混ぜるローターを持っており、これによって粒子が固まって流れのよい粒となり、プレスに送り込むのに適した材質を得る。この造粒フィードを円柱型のペレットに成型する。ペレットは、重さ6グラムで、その寸法も定められている。ペレットはグラインダーにかけれた後、約1600度で焼結される。これによって、細かく分かれていたMOXの粒子が溶けて一体となり、ほとんど固溶体のMOXとなる。そして最終的な研磨がなされる。

しかし、これは、元のプレスフィードが均質の高品位のものであって初めて保証できるものである。そして、この工程での研磨後の検査は、念入りで完全なものでなければならない。
BNFL、そして、関西電力の駐在品質管理検査担当者(高浜4号機と3号機の燃料の製造の際に現地に駐在)は、このような検査手順を守る用意がなかったようである。

安全上の意味あい

BNFLは、そのMOX製造過程の欠陥が安全性に取って持つ意味あいを無視しようと試みることができるが、関西電力や、原子力安全委員会、それに福井県の県民は、そうしてならない。
大量のプルトニウムMOX燃料の導入は、そもそも、それ自体、本来的に危険である。
グリーンピースは、今週中に高浜における安全性問題をめぐる他の面についてのデータを発表する予定である。

現時点では、セラフィールドMOXプラントで今回明らかとなった問題がもたらす安全性問題の二つに焦点を当ててみたい。

第一に、ペレットの外径の問題である。高浜3号炉のためのMOXの生産の過程で11ロットの燃料を検査しなかったためにペレットの外径について疑義があると言われている。
前述のとおり、生産工程について分かっているところによると、製造された燃料ペレットの20~30%が仕様を満たすことができず、不良品としてはねられるという。このうち、おそらく最高50%までが工程に戻されてリサイクルされる。残りは、スクラップとして捨てられる。ペレットの外径が保証されなければ、それが安全性にもたらす影響は大きい。
BNFLのデータ捏造に関する情報源となった人物が述べているとおり、プルトニウムMOXペレットの外径が合っていなければつぎのような問題が生じる。
「ペレットが大きすぎれば、膨張した際に燃料棒の被覆管を傷つける恐れがある。小さすぎれば、ペレットが振動を起こし、破損する恐れがある」(BNFLの従業員。インディペンデント紙に引用。6月14日)

MDFで採用されている品質管理システムの欠陥について明らかになったことからして、BNFLのSBR技術の正確さについて、また、このような燃料の日本の原子炉への導入がもたらすと予測される影響について、深刻な疑念を持たざるを得ない。そして、それには、高浜4号機用に製造されたMOXペレットも含まれる。
来週到着予定の高浜4号機用のMOXペレットもこの外径の問題を持っている可能性が大いにある。

大きな燃料ペレットが膨張して燃料被覆の損傷が生じる可能性、そして、小さなペレットが振動を起こして損傷し、その結果やはり燃料被覆の損傷を招く可能性は、安全性に関わる根本的な問題である。
高浜3号機と4号機で使われる予定のMOX燃料は、仕様を満たさない燃料が入っている可能性を抜きにしても、関西電力が計画している高燃焼度のためすでに過酷な条件の下におかれることになっているのである。

BNFLの品質管理問題から生じるもう一つの重要な点は、混合面での品質の悪さというもともとある問題を再浮上させるというものである。つまり、二酸化プルトニウムの粒子が局所的に—–場合によっては、ペレットの表面に—–偏在するという問題である。これがペレットの表面あるいはその近くで生じると、局所的に温度が上がり、燃料被覆の損傷をもたらす恐れがある。

ヨーロッパの施設でのMOX燃料製造の不良品発生率は、20~30%に達しており、これは産業側が容認しているものだということを忘れてはならない。
したがって、高浜4号機の8つの集合体の文字どおり何千ものペレットが欠陥品でありながら、BNFLの欠陥のある品質管理システムを素通りしているしている可能性があるのである。

数カ月前に指摘されたとおり、関西電力は、フランスで許可されているよりも高い燃焼度で高浜の原子炉を運転しようとしている。燃焼度が高くなるとMOX燃料は燃料被覆を破損させるということをフランスの実験データが、示しているにも関わらずである。
このことと、高浜で使われる予定のMOX燃料のペレットの外径、そして、その中のプルトニウムの粒子の外径が仕様とは異なっている可能性、あるいは蓋然性とを合わせると、炉心溶融を含む深刻な事故の可能性はそれだけ高まる。

グフォンとマールは、以下のように述べている。
「微小化の後得られる総量の大きさが、制御棒飛び出し事故の際の酸化物ペレットに含まれるエネルギーに関する基準を決める」(Gouffon/Merle「PWR内でののMOX集合体の利用に関連した安全性問題」1990年ウイーンでのIAEAの水冷却炉のパーフォーマンスに関する国際作業グループのための論文)

関西電力が、MOXペレットから放出されるエネルギー・レベルを予測できないとすると、たとえば、冷却剤喪失事故の際に、制御棒の効き悪さから、炉を制御できず、炉心溶融に至る可能性がある。
今年、7月、福井県の敦賀2号炉では、大量の冷却水の漏れが生じた。そして、損傷を起こした熱交換機の設計上の欠陥は、一般的なものであり、MOXを装荷することになっている高浜の原子炉にも共通するものであることが確認されている。

日本の関西電力が9月14日に発表したフロー・シートによると、BNFLの燃料集合体(碁盤の目状に並んだ264本の燃料棒を有する)のすべてのMOX燃料ペレットは、レーザー・マイクロメーターによってチェックされているという。さらに手作業によるチェックが行われる。
各集合体には、25ロット分のペレットが入っている。各ロットは約3000個のペレットからなる。各ロットから200個が抜き取られ検査される。データ捏造の行われたのは、BNFLによると高浜3号炉用だけに関連したもので、ペレットロット193ロットのうち22ロットについて品質保証データ捏造の疑義があるという。

データ捏造スキャンダルとは別に、MOXペレットの6.6%しか正確な外径の基準に合っているか否かを日常的に検査していないという問題がある。このような数字は、他の産業過程においてなら品質保証を検討する際に十分な信頼区間と考えることができるかもしれないが、プルトニウムを扱っている産業としてはまったく不十分なものといえよう。
プルトニウムは、核兵器の材料であり、燃料の仕様に関連したわずかなエラーも大きな核事故につながりうるからである。

BNFLの品質管理システムに関する手短な検討からだけでも、数々の疑問がわいてくる。

レーザー・マイクロメーターによる検査の過程でいくつのペレットが不良品としてはねられるのか。

第二段階目の検査でいくつがはねられるのか。

関西電力のフローシートによると、関西電力はデータ・シートを確認することになっているが、関西電力はなぜデータ捏造を発見できなかったのか。

サンプリングの手順は、MOX燃料の使用のリスクを考慮して十分な信頼区間を得ることのできるものと言えるか。

これらの疑問、そして日本のプルトニウムMOX計画から出てくるその他の多くの疑問は、緊急に検討する必要がある。

結 論

原子炉の安全性とプルトニウムMOX燃料というのは、互いに相いれない概念である。そして、関西電力と通産省でさえも、今回到着するMOX燃料を来月高浜5号機に入れる作業を進めることができるかどうか真剣に迷っていることだろう。

MOX燃料が装荷されてしまった後、向こう何カ月かの間に原子炉で事故が起きるようなことがあれば、日本の原子力計画に対して国民の間に残っている信頼が壊されてしまうことになるだろう。

現在、パシフィック・ピンテール号に積まれているMOX燃料の品質を確認するオプションは、存在していない。捏造された可能性のある品質管理文書を使ったBNFLの言葉を信じるというのは、関西電力にもできないだろう。 日本に燃料がついた時点で検査するというオプションでは、MOXペレットの品質に関する証拠はほとんど得られない。
X線による検査は、燃料集合体の表面から燃料棒の中を透視することはできない。ペレットの均質性を実際に検査するには、非分散性X線ミクロン分析—–非破壊検査—–が必要だろうが、これはペレット毎に行わなければならない。
これを実施する唯一の方法は、8つの集合体を分解し、燃料棒を取り出すことだろう。関西電力がこのような検査を、恐らくはJNCの運転する東海村工場で行うとしても、日本で燃料集合体を組み立て直すオプションは存在しない。これは、BNFLが英国でやるしかない。

この燃料に残された唯一のオプションは、これを放棄し、非経済的で危険なプルトニウム計画を押し進めようとする日本の試みの新たな失敗として、帳簿から抹消することである。日本の長期原子力計画全体の方向性について再検討する時期はとっくに来ているのである。

関連キーワード