世界24か国のバターを分析PCB、DDT、ダイオキシンなど有害化学物質の地球規模の汚染を指摘POPs条約にむけた交渉会議 開幕日にグリーンピース発表
RELEASE FOOD 2000.12.04

世界24か国のバターを分析

PCB、DDT、ダイオキシンなど
有害化学物質の地球規模の汚染を指摘

POPs条約にむけた交渉会議 開幕日に
グリーンピース発表

環境保護団体グリーンピース、日本を含む世界24か国から入手したバターのサンプルを分析した報告書を、本日、難分解性有機汚染物質(POPs)条約のための交渉会議(於 ヨハネスバーグ:南アフリカ)で発表した。

この報告書では、いくつかのサンプルから高レベルで検出されたPCB、DDTなどの有機塩素系農薬、ダイオキシンなど分析データの他、及び地域的な汚染の傾向や、POPsに特徴的な汚染の傾向について考察を加えている(添付書類2枚めの “要約” を参照)。

今回の政府間交渉(INC5)は、来年5月に採択が見込まれている条約の文書を確定するために予定されている最終交渉でなる。これは、人々が有害化学物質汚染のない環境で暮らし、また汚染のない環境を未来の世代に引き継ぐという約束ができるかどうかの懸った歴史上重要な機会でもある。

この報告書でグリーンピースは、ダイオキシンやPOPsが汚染を引き起こす産業の成長とともに地球上に広がっているという更なる証拠を発表した。世界24ヶ国から入手したバターサンプルを分析したところ、工業先進国から高いレベルのダイオキシンが検出されている、スペイン、オランダ、イタリアが高い数値を占めているが、近年工業化を進めているインド、中国、ブラジル、アルゼンチンで驚くほど高い数値が出ている。*1

またPCBやDDTなどでは、これらを最近まで製造、使用していた地域に高い汚染の残留傾向があると同時に、生産使用源から遠隔地への移動が顕著であることも示された。

日本のサンプルからは、総PCBで脂肪1g当り600pg/、総DDTで同2970pg、総リンデンで同2840pg、ヘキサクロロベンゼンで同1720pgが検出された。また、ダイオキシンはWHO-TEQで0.40pg、I-TEQで0.33pgが検出された。

条約交渉は、国連環境計画の主催で行われ、最も対策を急ぐべき12種類のPOPs *2 を初期の対象物質としている。欧州連合諸国やアフリカグループの途上国など、大多数の国が12のPOPsは無くすべきであると合意している。しかし、米国が少数だが影響力のある工業国の先頭にたって、ダイオキシンなど非意図的POPsの全廃に反対している。米国は自国内の製造、流通、消費などに影響を与える可能性のあるいかなる義務にも強硬に反対しており、より環境負荷を与えないプロセスや原料、消費材を導入・実施させて、現在の汚染の原因を代替していくことに対しても極めて否定的である。日本もこれまでのところ、米国に率いられた少数の工業国(JUSCANZ:日本、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の方針を反映した立場を保ってきた。

ハーグで行われていた温暖化防止会議で米国や日本は後ろ向きの立場を最後まで崩さず、交渉が決裂したのは記憶に新しい。国内各地でダイオキシンの極めて高い数値が検出されている日本で、ダイオキシン汚染を絶とうという市民の願いと条約で求められている目標 “全廃” とは共通であるはずである。国内の実態を重んじ、日本も今回の会議でPOPs全廃に向け、交渉をリードしていくべきである。

POPs汚染のない未来を求める市民の声をえ日本政府に届けるため、本日よりホームページ上で環境庁長官宛てにINC5に関してメールを送る「メール・アクション」を始めた。*3 これは、グリーンピース全体で行っているPOPs グローバル・サイバーアクションの一環。

*1:添付の表(報告書から抜粋した分析結果表)を参照
*2:ダイオキシン類、フラン類、PCB、DDT、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、トキサフェン、マイレックス、ヘキサクロロベンゼン
*3:メール・アクション (終了しました)

グリーンピース:バターによるPOPs汚染分析の要約

「バターサンプル分析によるPCB、有機塩素系農薬、ダイオキシン類の地球規模の分布・拡散傾向の研究」

英国エクセター大学内 グリーンピース調査研究所
テクニカルノート13/00より抄訳

バターは、POPsの地域および地球規模での空間的時間的分布をあらわす指標として有効であり、また同時に地域的にダイオキシン類の分布パターンの指標を入手するために有益な基礎情報になりうる。

1998~1999年に掛けて23ヶ国から集めたサンプルについてPCBをはじめ、DDTなどの有機塩素系農薬の分析を行い、24ヶ国からのサンプルについてはダイオキシン類、フラン類、コプラナーPCB類について分析を行った。

総PCBについて:

23ヶ国からの63サンプルについて分析をおこなった結果、その濃度の開きは60倍に達した。欧州や北米で高く、南半球で低いという傾向がみられ、過去に地球上で使われてきたパターンや環境放出の推定と一致している。バターサンプルに見られるPCB異性体別の蓄積は、それが多様であることから、PCBが発生源から遠く隔たった場所へと大気中移動する実態を反映していた。

チェコ共和国からのサンプルが最高値(14,090pg/g)を示し、これは、東欧においては欧州の他の地域よりもPCB生産・使用を停止するのが遅かったことを反映している可能性がある。アフリカ圏からの唯一のサンプル(チュニジア)は、11,810pg/gを示し、最近になってやっと生産や新規使用の禁止がなされた実状がここでも反映されている可能性がある。

HCB(ヘキサクロロベンゼン)について:

HCBはPOPsの中でも最も揮発性の高い物質のひとつである。このため、大気に混じりやすく発生源から遠くへと移動しやすい。が、地域的にも明らかにみてとれる特性があり、チェコ共和国、オーストリア、中国、ブラジルでことに高いレベルを示した。

DDT, リンデン:

DDT(p,p-DDT)とDDE(p,p-DDE)、リンデン(異性体別)の濃度は、現在もこれらの使用されている地域、たとえばインド、中南米でDDT、インド、中国、スペインではリンデンが高いレベルを示した。

インドで記録したDDTの最高値は、DDTが現在もマラリア制御の目的で使用されている事実が背景にあるとみられる。分析ではDDTとその分解物であるDDEとの比が大きいことは、DDTが最近まで使われていたか現在も使用中(またはその疑いがある)ことを示す指標のひとつであるが、こうした高い比は、中南米、インド、チュニジア、スペイン、米国西海岸からの1サンプル、オーストラリアからの2サンプルで見られた。

リンデンはインドの222,760pg/gを最高に、中国、スペインで高かったが、これもごく最近までリンデン製剤の製造か使用が行われていたことを反映している可能性がある。

ダイオキシン類

全般的に欧州と、近年工業化の進んでいるアジア(インド、中国)や南米(殊にアルゼンチン)で高い濃度を示す傾向が見られた。地域別では欧州ではスペインで非常に高い数値がみられた * ことを別にすれば、その他のサンプルは従来欧州の乳製品で報告されていた範囲に収まる。スペインのほかオランダとイタリアの数値が高かった。

* スペインのサンプルでは2,3,4,7,8-PCDFの含有が顕著であり、何らかの特殊な汚染源があることを暗示していたが、現段階ではそれが何であるか特定できていない。

ダイオキシン濃度に占めるコプラナーPCBの度合いはドイツ、イタリア、チェコ、チュニジア、インド、アルゼンチンで顕著であった。

地域的なパターンや、または汚染源を示す貴重な手がかりが得られることを期待して、異性体分析のプロファイルを続けており、その結果は後の報告書で発表したい。

* レポート原文はhttp://www.greenpeace.org/toxics/toxic_2.htmlで入手できます。

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