市民団体が共同アピールあまりにも拙速な自民党の「エネルギー基本法」提出をストップさせ、市民全体でエネルギー政策を考えよう!
RELEASE ENERGY 2001.02.22

市民団体が共同アピール

あまりにも拙速な自民党の
「エネルギー基本法」提出をストップさせ、
市民全体でエネルギー政策を考えよう!

2月22日、グリーンピース・ジャパンを含む38の団体が、自民党が提案しようとしている「エネルギー基本法」に反対し、共同アピールを発表しました。(以下、アピール文)

自民党が「エネルギー基本法」の今国会提出を準備

今開かれている通常国会に、自民党から「エネルギー基本法」が提案されようとしています。昨年12月自民党のエネルギー総合政策小委員会が「第3回報告書」をまとめ、そのなかで、エネルギー基本法(骨子)を公表しました。法案の正確な内容は公表されていません。

私たちは環境の保護、地球温暖化に対する対策、自然エネルギーの推進、脱原発政策の実現などの課題について取り組んで参りました。そして、現在の日本におけるエネルギー政策の内容と決定の手続に問題があると考え、その改善のために活動してきました。その社会的立場は多様であり、原子力発電の位置づけなどについても同一ではありません。しかし、いま自民党が準備している「エネルギー基本法」については、その制定の手続きと内容の双方に以下に述べるように大きな疑問があり、法案の拙速な提出に反対するという点で一致して、この共同アピールを発表するものです。そして、最後に述べるような理念に立って、市民の共同でエネルギー政策を練り上げていくための作業を行うべきであると考えます。

民主化と透明化の必要なエネルギー政策決定手続

日本のエネルギー政策は、総合エネルギー調査会という通産大臣の諮問機関で審議され、これが関係閣僚の会議で決定され、国民の代表たる国会の場で審議されることがありませんでした。また、独占的な大企業がエネルギー政策の決定権を持ち、地方自治体などが自主的に取り組める分野がほとんどないという問題も指摘されてきました。調査会の委員は、原子力を推進する立場の者によって占められ、政策決定の基礎データ・資料の公開も不十分でした。このようなエネルギー政策の立案過程の民主化と透明化をはかり、「情報公開と政策決定過程への市民参加を推し進め、すくなくとも基本計画を国
会の議決事項とすること等を内容とする「エネルギー政策基本法」を制定すべき」(2000年10月日弁連人権大会決議より)ことは、そもそも国のエネルギー政策を厳しく批判してきた日弁連が主張していたことです。

法案の策定過程が拙速すぎる

自民党はこの通常国会にも法案を提出するとされています。しかし、現在までには骨子案しか公表されていません。このこと自体が法案の立案手続きとして許されないことではないでしょうか。

自民党の最近の政治手法は、国民によくわからないように準備を進めて法案を国会に提出し、活発な議論もないまま多数与党の「数の論理」で法案成立を進めようとするものです。これは、原子力発電推進特別措置法などの制定の仕方をみれば明白です。この法案の準備を進めている小委員会の事務局長は東京電力出身で原発推進ロビーを代表すると見られる加納時男議員です。

いうまでもなく、エネルギー政策は市民生活の基本を規律する極めて重要な政策課題です。仮に自民党が法律案の提案を行うとしても、すくなくとも、このような重要な法案については十分な市民の討論の時間を確保するために事前に国民の前に原案を示すべきです。そして、十分な時間を掛けて、エネルギーや環境問題に関わるNGOや専門家の意見や広く地方自治体や市民の意見を聴く手続きを取った上で、内容を練り上げてから国会に法案を提出するべきであると考えます。

私たちは、自民党に対して、

検討中の法案を速やかに公表すること。
法案に対する意見の聴取のための公聴会を全国で開催すること。
少なくとも、小委員会の議論の内容を環境NGOに説明する機会を設けること。
法案の今国会提出をやめること、

を求めます。

自民党のエネルギー基本法の内容における問題点

自民党案は政策決定の手続きの点だけでなく、その内容においても、私たちの求めているものとは対極にあるものです。第1には、法案が自然エネルギーの推進を阻害するということです。法案の骨子には「エネルギーセキュリティ」や「長期的経済性」、「質・量・価格・時間」の優れたエネルギーなどの表現が使われています。そして中間報告は、自然エネルギーを「補完的」なものと位置づけています。
エネルギーの質や安定性を問題とすることは、結果的には自然エネルギーを本格的に推進することにブレーキをかけることにつながります。自民党案は自然エネルギーの推進を阻害するものといわざるをえないでしょう。

第2に、持続可能や環境保全という美辞麗句は散りばめられていますが、原子力を環境に優しいエネルギーのトップに挙げるような倒錯した考え方が立案の基本にあり、原子力施設の事故や放射性廃棄物のもつ環境への破壊的影響への認識が伺えないことは根本的な問題です。このことは、『エネルギーフォーラム』2000年12月号に掲載された「エネルギー基本法の制定を目指す」という表題の小委員会委員長甘利明氏のインタビューに示されています。本音のインタビューの中でこの法案制定に込められた意図を甘利委員長は次のように語っています。

「CO2という観点からすると、(原子力は)地球にかける負荷が少ないエネルギーでもあります。施設をつくる材料の生産から、施設を廃棄するまでに排出するCO2排出量、これをライフサイクルアセスメント基準と言いますが、これで言いますと、原子力は水力と並んで最優秀選手ですね。風力は原子力の3倍、太陽光は5倍もあり、原子力はまさに地球に優しいエネルギーなんですよ」 「原子力を進める際にも、国のエネルギー政策として原子力がこの基本法上大事なんですということで、国民のみなさん方に理解してもらう。」

「国がきちっと後ろ盾になっているということを示すためにも、国が核燃料サイクル全般について責任を確固として果たします、と言うことを示すためにもエネルギー基本法の制定は欠かせない。」
— 「エネルギーフォーラム」2000年12月号より引用 —

法案の骨子を見るだけでは明確にされていないところもありますが、この委員長の発言を見れば、自民党案には世界の流れに真っ向から反して、原子力を推進する論理が隠されていることが理解できます。

このような意図で、いまエネルギー基本法を制定することは全くの時代錯誤といわざるを得ません。

これまで、エネルギー政策は通産省(経済産業省)の官僚が立案してきました。いま、総合エネルギー調査会の結論も待たずに、自民党がこのようなエネルギー基本法を提出しようとしている意図と背景は、次のように考えられます。市民の側から巻き起こってくる、エネルギー政策転換を求める声を、一部取り入れたような形で、持続可能とか環境保全という言葉をちりばめて、実際的な内実では、電力会社などの原子力離れに歯止めをかけ、自民党の地方政治家の利権である原力をこれまで通り推進できる体
制を今の内に固めておきたいとする考えがあると思われるのです。

市民の側から真に持続可能なエネルギー政策とエネルギー基本法を対置しよう

私たちはその制定手続きと内容に根本的な問題がある、自民党の「エネルギー基本法」の制定に一致して反対することを明らかにするとともに、次のような理念に立った真の「エネルギー基本法」を市民の共同で練り上げていくための作業をはじめるべきであると考えるものです。以下に掲げる理念は、まず議論のたたき台として提案するものです。このような提案をもとに、ひろく国民的なエネルギー政策に関する議論が巻き起こることを期待します。

エネルギー政策の民主的決定

エネルギー政策を決定するのは、行政ではなく、市民であること。政治的には国会であることを明確にし、市民の選択を直接反映させた政治的な決定によってエネルギー政策の変更が可能となる仕組みを確保する。

持続可能なエネルギーと政策

現在と将来の環境負荷(放射能・大気汚染・温暖化(CO2)・自然破壊など)を考え、日本全体の望ましい持続可能なエネルギーの全体像とその政策を、長期的視野の観点から十分な議論をして作り上げる。

エネルギー政策の分権化

エネルギー政策において地方自治体が果たすべき役割を、国の政策に従うという従属的なものから、新しいエネルギー政策を構想し、創造していく主体的なものとする。

エネルギー消費削減と効率的な利用

我が国においてもエネルギーの消費削減と効率的利用こそ、持続可能なエネルギーシステムの基礎であることを確認する。

自然エネルギーの普及促進

地球温暖化や環境問題に対する対応として、自然エネルギーに大きなプライオリティをおき、その普及の決め手となる環境税や買い取り義務規定の根拠となりうる自然エネルギーの普及の根拠規定を盛り込む。

原子力への優遇策をやめる

長期・総合的なエネルギー政策を確立し、その計画に従って、原子力に対する電気事業法、税法上の特別扱いをやめ、政府は原子力に対して中立的な立場をとることを明確にする。その具体化として、安全対策以外の政府予算を支出せず、原発推進特別措置法を廃止する。また、放射性廃棄物処分までのコストを誰が負担すべきかを明確にする。

【賛 同】 青森県保険医協会環境部、A SEED JAPAN、足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ、一新塾クリ-ンエネルギ-・チ-ム、石川県社会法律センター、エネルギーの未来を考える会・岡山、大阪・チッソ水俣病を告発する会、気候ネットワーク、とめよう原発せたがやネットワーク、日本YWCA脱原発をめざすプロジェクト、グリーン・アクション、グリーンピース・ジャパン、原子力資料情報室、原水爆禁止国民会議、原水爆禁止調布市民会議、「原発の危険性を考える宝塚の会」、大地を守る会、ピースネットニュース、地球の友・ジャパン、東京工業大学公害研究会、自然エネルギー推進市民フォーラム、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)、森林NGO緑友会、ストップ・ザ・もんじゅ東京、脱原発・東電株主運動、徳山ダム建設中止を求める会、中部よつ葉会、能登(志賀)原発運転差止訴訟原告団、日本消費者連盟、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、ハーモニクスライフセンター、羽島環境の会、福島老朽原発を考える会、婦人民主クラブ、放射能のゴミはいらない!県条例を求める会、岐阜・2001年の会、ままはぷん、モンキーベイ自然保護基金(以上38団体:あいうえお順、他135個人)

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