東電福島MOX差し止め裁判差し止め却下、しかし「疑惑」は「疑惑」として残った
RELEASE ENERGY 2001.03.23

東電福島MOX差し止め裁判

差し止め却下、
しかし「疑惑」は「疑惑」として残った

本日、福島地方裁判所は福島第一原発3号機用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料差し止め仮処分に対して、差し止め却下の決定を下した。

差し止めは、認められなかったものの、裁判の大きな論点となったデータの公開については、東京電力の非開示の姿勢を強く批判する内容が決定の中にあった。

決定では燃料ペレット外径寸法の抜き取り検査データは、企業のノウハウとは考えられない、と断定している。

グリーンピース・ジャパンでは、東京電力に対し、さらにデータの公開を求めていく。企業のノウハウ、という言い訳はもう使えないからだ。

裁判でデータが公開されなかった以上、疑惑は疑惑として残った。この疑惑の残る燃料を、福島で使うことを許してはならない。

グリーンピース・ジャパンはこの決定を受けて、改めてMOX燃料の使用中止を求める申し入れ書を、東京電力の福島事務所に提出した。

東京電力株式会社
代表取締役社長
南 直哉殿

2001年3月23日
申入れ書
グリーンピース・ジャパン
事務局長 志田 早苗
核問題担当 鈴木 かずえ

不正MOX燃料を福島で使うな!

福島第一原発3号機で保管中のMOX燃料は品質管理に問題があり、使用は許されません。

また、MOX燃料はプルトニウムを含んでいるために、安全性などの面で、通常のウラン燃料よりもさらに問題があり、グリーンピースは以下の理由から利用には絶対反対です。

一、MOX燃料はより危険である。
二、MOX燃料は労働者の被曝量を増やす。
三、MOX燃料の使用済みの処分方法が確立されていない。
四、MOX燃料の使用により核拡散の問題が生じる。
五、柏崎刈羽原発3号機に運ばれようとしているMOX燃料には品質管理データに不正がある疑いがある。

また、MOX燃料はウラン燃料よりもコストがかかることから、そのコストを吸収するために、効率ばかりが重視され、その結果、安全性が軽視される恐れもあります。
また、日本にはエネルギー資源が乏しいためにプルサーマルを行う必要があるといいますが、それなら、放射能汚染を引き起こすプルサーマル燃料ではなく、省エネルギーや、風力などを利用する再生可能エネルギーにこそさらに取り組むべきと考えます。
以下に、問題点の詳細を添付します。

一、MOX燃料はより危険である。

ウランとプルトニウムとは、混ざりにくく、MOX燃料ペレット中にプルトニウムの濃度の高い部分(プルトニウムホットスポット)が形成される。このスポットにおける核分裂は、局所的な温度上昇をもたらし、MOX燃料棒の被覆管に損傷を与える可能性がある。また、MOX燃料を使った原子炉は、プルトニウムの核反応の性質により、制御棒のききが悪くなる。さらに通常のウラン燃料よりも多くの核分裂生成ガスを出すため、燃料棒内での圧力も高まる。全体として大幅に安全性が低くなる。

二、MOX燃料は労働者の被曝量を増やす。

ウラン燃料の製造においては存在しない、アメリシウム241からでるガンマ線に労働者が曝される。また、プルトニウムそのものの毒性が非常に高いため、被曝管理も難しくなる。プルトニウム汚染事故は、1991年6月ドイツのハナウMOX工場で起きており、この事故が大きな原因となって、工場の運転許可が取り消されている。また、同じ年、ベルギーのFBFC社MOX燃料集合体組み立て工場でも労働者がプルトニウムを吸入する事故がおきている。

三、MOX燃料の使用済みの処分方法が確立されていない。

ウラン燃料の使用済みさえ、最終処分地のめども立っておらず、再処理前の使用済み核燃料が各地の原発の使用済み核燃料貯蔵プールを満杯にさせている。電力会社は「MOX燃料の使用済み核燃料も再処理する」とするが、MOX燃料を再処理できる再処理工場は存在せず、その使用済み核燃料を貯蔵する場所もなく、使用されたサイトが核のゴミ捨て場となる危惧は大きい。

四、MOX燃料の使用により核拡散の問題が生じる。

現在の全世界での民事用プルトニウムの備蓄は200トン以上である。そのうち、日本のプルトニウムはおよそ32トンにものぼる。今回のプルトニウム燃料輸送に対し朝鮮民主主義共和国は「日本は核兵器を製造するつもりだ」と報道した。5kgのプルトニウムで核兵器1個を製造可能という事実から、日本のプルトニウム備蓄が東アジアに軍事的核拡散の緊張を増長させていることは否定できない。

五、柏崎刈羽原発3号機に運ばれようとしているMOX燃料には品質管理データに不正の疑いがある。

関西電力高浜原発用MOX燃料の品質管理データはねつ造されていた。それは、燃料ペレットの外径寸法の全数計測データと抜取検査データのヒストグラムを比較することによって市民により暴かれたのである。柏崎原発3号機用MOX燃料の外径寸法の全数計測データは、消去されているとされている。また、抜取検査データは、本来1ミクロン刻みのものが存在するのにもかかわらず、4つづつまとめたものの平均値しか公開されていない。従って、比較による検討ができない。しかし、高浜用燃料のデータねつ造をつきとめた「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」の小山英之氏が、4つづつまとめたものの平均値から本来存在する1ミクロン刻みのデータを予測し、それを正規分布と比較したところ、異常な形が現れたという。異常な形は、不正が行われたこと可能性を示唆している。

添付資料1:東電福島MOX差止め裁判の概要

東電福島MOX差止め裁判の会 (原告代表 林加奈子)

■ 事件名:

MOX燃料使用差止め仮処分命令申立事件

■ 争 点:

一、不正の有無:
本件MOX燃料ペレットの外径寸法に係る抜取検査における不正操作の有無

一、危険性:
仕様外の燃料ペレットを包含した場合におけるMOX燃料の危険性

■ 相手方:

東京電力株式会社

■ 裁判所:

福島地方裁判所

■ 提 訴:

2000年8月9日

■ 債権者数 (原告数):

1915人 (内、福島県民930人)

■ 経 緯 (6回の審尋と1回の口頭弁論が開かれた):

2000年08月09日:福島地方裁判所に仮処分申請

2000年08月10日:第1回審尋
・原告の主張を説明

2000年08月10日:福島1-3用MOX燃料に通産省が合格証交付

2000年09月18日:第2回審尋
・東電からの反論、東電は却下を求めた。

2000年10月10日:裁判の会有志、通産省に東電福島MOX燃料合格証に不服申立

2000年10月27日:第3回審尋
・東電は不正は無いとしたが、原告は立証を求めた

2000年11月28日:第4回審尋
・東電、あくまでもデータを示しての立証せず

2000年12月01日:通産省がMOX燃料品質管理についての説明会を福島で開催

2000年12月26日:第1回口頭弁論
・小山氏(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)がデータ不正疑義について証言
・英国核物理学者フランク・バーナビー博士が不良燃料の危険性について証言

2001年01月30日:第5回審尋
・裁判長、品質管理データの所在について質問

2001年02月26日:福島県知事、県議会でプルサーマル拒否宣言

2001年03月01日:結審

2001年03月06日:「プルサーマル計画 1年先送り確実に」と読売が報道

2001年03月23日:決定

■ よびかけ団体:

ストップ!プルトニウム・キャンペーン(福島)/ プルサーマルに反対する双葉住民会議(福島)/ いわきに風を(福島)/ グリーンピース・ジャパン / プルサーマル公開討論会を実現する会 / 原子力資料情報室 / 福島老朽原発を考える会(ふくろうの会) / 日本消費者連盟 / ストップ・ザ・もんじゅ東京 / 東京電力と共に脱原発をめざす会 / みどりと反プルサーマル新潟県連絡会(新潟) / プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク(新潟) / ピースサイクル新潟(新潟) / 柏崎反原発同盟(新潟)

添付資料2:MOX燃料使用差止め仮処分申請事件決定(判決)の、情報公開に関する部分抜粋
(2001年3月23日交付)

原子力の安全性の確保は多数の公衆の生命身体の安全性にかかわるものであるから、原子力発電所で使用される原子燃料の品質が問題とされたような場合には、可能な限り具体的なデータを明らかにして各方面における検証を可能とするように務めることが原子力分野で事業を実施する企業の責務というべきであり、平成12年11月1日付け「日本原子力学会倫理規定(案)」の行動指針においても、「原子力の安全に係る情報は積極的に社会に公開しなければならない。会員は、その情報がたとえ自分自身の所属する組織に不利な情報であっても、決して隠してはならない。」と謳われているところである。ベルゴニュークリア社は、aで認定の通り、本件抜取検査データを企業秘密に属するとしてその一般公開を拒絶しているのであるが、ペレット外径寸法の検査データが重大な製造ノウハウにかかわるものとはおよそ考えがたく、現に競争相手企業であるBNFL社がこれらのデータを一般公開していることに鑑みれば、ベルゴニュークリア社の上記のような姿勢は非難されてもやむを得ないものがある。また、債務者においては、上記aで認定の通り、平成12年2月付け報告書を作成する過程において、ベルゴニュークリア社と本件抜取検査データを一般公開すべく折衝した経緯は認められるものの、債権者らが、上記のような原子力の安全に係る情報の公開がきわめて重要であるとの見地から、本件仮処分手続きにおいて、本件抜取検査データの公開を訴えたにもかかわらず、発注者の立場で、ベルゴニュークリア社に対し、重ねて特段の要請を行い、同社の頑なな対応に翻意を促し、本件抜取検査データを公開すべく努めた形跡が窺えないことは、原子力発電所という潜在的に危険な施設を設置稼動する立場にあるものとして、必ずしも充分な対応とはいい難い。

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