捕鯨問題の日本経済への影響について
RELEASE OCEAN 2008.01.21

捕鯨問題の日本経済への影響について

社団法人経済同友会 代表幹事 桜井 正光様

拝啓

ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。私どもは環境保護団体グリーンピース・ジャパンと申します。ご周知のことかと思いますが、昨年の11月に日本の捕鯨船団が下関港を出港して以来、捕鯨問題が連日、国内外で活発に報じられております。今回は、日本に支部を持つ国際的な環境保護団体として、日本の経済を引率する日本経団連の御手洗冨士夫会長に、環境問題を超え国際摩擦へと発展しているこの問題の本質と、「感情的」だけとは言えない諸外国の見解をお伝えするとともに、日本経済に極めて深刻な影響を与える可能性のある捕鯨問題の解決策を見出していただきたく、本書簡を記している次第です。

アメリカ・オーストラリア・イギリス他、20カ国以上の国々が日本の南極海での捕鯨を批判し、中止を求めております。これらの国々では捕鯨反対が多くの市民(=消費者)の思想に根強く浸透しており、環境への意識が高くなるにつれその勢いは増すばかりです。世界各国のメディアもこの問題について大きく報道しております。またニュージーランドでは、現地消費者がトヨタ自動車株式会社の現地法人に対し、「御社の製品はとても気に入っているが、このままでは買い替えの際に他国の企業の製品を選ばざるを得ない」とした手紙を送り、現地法人が「トヨタは捕鯨に反対である」と語ったことが新聞(注1)にも掲載されております。その後、当団体が日本のトヨタ自動車に問い合わせたところ、現地法人の「捕鯨反対表明」はトヨタ自動車の公式見解ではないとの連絡があるなどの混乱も生じています。

国際的な合意のもとで設定された南極海のクジラ保護区(注2)において、年間1000頭もの捕鯨を環境・経済・外交のあらゆる方面で国際摩擦を生みながら税金を投入し、継続しようとする現状は、日本の経済界・政界の方々が想像される以上に深刻なリスクを招いていることをお伝えします。1980年代まで捕鯨を大規模に行っていたニッスイ(日本水産株式会社)が「捕鯨にかかわること自体が経営リスクにつながる」(注3)としているように、国際的に「捕鯨」はその企業、そしてさらには国のマイナス・イメージを諸外国に与え続けています。

グリーンピースは日本製品のボイコットを支持していませんが、捕鯨問題が世界で注目を浴びる今、諸外国の消費者による日本製品の不買運動という可能性もあります。また日本、そして貴団体が、洞爺湖G8サミットを前に「環境」をキーワードに世界をリードしたいとの方針を打ち出していますが、このイメージもすでに大きく損なわれ始めています。さらにオーストラリアとの経済協力交渉、そして2016年のオリンピック東京招致などにも影響があるでしょう。日本の株価も低迷する中、日本の経済を率いる貴団体の捕鯨に対する迅速かつ慎重な対応が求められております。

グローバルな視点で企業活動を行う日本企業のためにも、賢明なご判断のもと、「日本経団連は日本政府が行う南極海での捕鯨を支援せず、政府に中止を要求していく」旨を国際的に発表されることを、日本を愛し日本に根ざすNGOとして誠心よりご提案させていただきます。以上、ぜひご検討をお願いいたします。不明な点等がございましたら、どうぞ遠慮なく下記までお問い合わせください。

敬具

注1: ニュージーランド:ドミニオン・ポストの2007年12月19日の記事より
注2: 2006年5月29日の日経産業新聞 21ページ記事より 注3:1994年に日本も加盟する国際捕鯨委員会(IWC)が南極海域にクジラ保護区(サンクチュアリ)を設定

特定非営利活動法人 グリーンピース・ジャパン
事務局長 星川 淳
海洋生態系問題担当 花岡 和佳男

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