「表現の自由」の保障により2人は無罪――調査鯨肉裁判:第一回公判前整理手続きで弁護団が主張
RELEASE OTHERS 2009.02.13

「表現の自由」の保障により2人は無罪――調査鯨肉裁判:第一回公判前整理手続きで弁護団が主張

【2月13日 青森】本日、青森地裁にて、昨年7月11日に窃盗・建造物侵入罪で起訴されたグリーンピース・ジャパンのスタッフ佐藤潤一と鈴木徹に対する第一回公判前整理手続き(注1)が始まった。公判前整理手続きには、裁判官、検察官、弁護人、そして佐藤潤一と鈴木徹が参加した。弁護団は、起訴事実について、佐藤と鈴木が起訴状に記載された時刻や場所において鯨肉を確保したことについては全面的に認めるとした。しかし、その行為が窃盗や建造物侵入罪に当たるかという点については、全面的に無罪を争う姿勢(注2)。

この事件は、昨年4月に佐藤と鈴木が調査捕鯨船団の元船員の内部告発情報を元に、船員が行っている組織的な鯨肉の横領行為について調査した際、船員が自宅に送った鯨肉入りの段ボールを横領行為の確固たる証拠として確保したもの。その後、佐藤は東京地検に鯨肉とともに横領行為の告発を行ったが、横領行為については不起訴となり、かわりに両名が窃盗罪と建造物侵入罪で起訴された。

弁護団は、公判前整理手続きにおいて、船員の鯨肉横領行為について佐藤と鈴木が行った調査活動が税金投入事業の不正を暴くというジャーナリズム的な目的と手法で行われており、それらが明らかに「窃盗」のものとは異なることを強調した。それゆえに、国際法の観点から彼らの調査活動が日本も批准する国際人権(自由権)規約に定められる「表現の自由」によって保護されるべき正当行為であることと、国内法の観点から「窃盗罪」の犯罪構成要素である「不法領得」の意思がないことにより無罪であると主張した。

国際人権(自由権)規約は日本も1979年に批准した条約であり、国内法と同等の効力を持つ。その第19条には、表現の自由として情報を「伝える」自由だけではなく、「求め、受ける」自由を「すべての者」に認めている。欧州人権裁判所の判例では、NGOに報道機関と同等の権利を認めるほか、報道機関やNGOが外形的な犯罪行為を行ったとしても、それらが成熟した民主主義社会の形成に必要な「一般的な公共の利益に関する問題についての情報や思想を広めることによって国民的論議に貢献できるような活動」であれば、「表現の自由」の保障がおよぶべきで処罰するに当たらないとする判例が数多くある。

海渡雄一主任弁護人は「今回は環境NGO活動家の市民的自由、とりわけ表現の自由がどのような場合に制限可能であるか、その自由の範囲が問われているケースだ。ヨーロッパ人権条約や、日本が批准し国内法と同等の効力を持つ国際人権規約にもとづく判例では、民主社会において公権力の不正に対する監視役としての報道機関やNGOに対しては表現の自由ができる限り広く認められなければならないとされており、この事件において日本の裁判官が同様の判断を下すことを願う」と述べた。

さらに、公判前整理手続きに参加した佐藤潤一は「私たちに法を破る権利がないのは重々承知しているが、税金が投入されている調査捕鯨における不正行為が明らかになったという社会的な利益とのバランスも考えて欲しい」と訴える。

第二回の公判前整理手続きは3月23日に予定されているが、初公判は未定。

注1:公判前整理手続きは、裁判員制度を念頭に公判期日の短縮化を目的として導入された手続きで、公判前に裁判官、検察官、弁護人、そして被告人が話し合い、その証拠や争点などを絞る。しかし、公判前整理手続き中にその審議が非公開になる傾向があることから、検察官によって提案された今回の事件へのこの手続き導入について、弁護団は当初から反対していた。結局はこの公判前整理手続きが裁判官によって採用され、本日の第一回公判前整理手続きに至る。
注2:国際人権法に基づく予定主張の概要 (PDF 1.8M)

お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
青森コミュニケーションセンター 広報担当

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