「生態系に根ざした食と農へ」お話ししてきました
FOOD 2018.04.13

「生態系に根ざした食と農へ」お話ししてきました

こんにちは。サポーター窓口の金海です。

昨年、石川県での田んぼの生きもの調査でご協力いただいた河北潟湖沼研究所が開催したセミナーで、グリーンピースの食と農業担当の関根が「生態系に根ざした食と農へ」というテーマでお話ししました。

地元周辺の農業関係中心の参加者が集まった、熱い会場の模様をお伝えします。

[写真:会場の様子 (C)河北潟湖沼研究所]

環境NGOがなぜ農業

いま、農業による環境破壊が世界中で脅威になりつつあります。

アマゾンの広大な原生林を伐採し、いちめんに遺伝子組み換え大豆を植えます。そうした大豆飼料にして、やはり森林を切りひらいた巨大な工業型の家畜放牧場が展開されています。化学肥料による水質汚染も深刻です。いまや農業は最大の水質汚染源ともいわれています。

その要因のひとつは農薬です。

人間の食料の9割を賄う100種の作物うち8割の受粉を担うミツバチなどの花粉媒介生物は、近年生息状態が悪化し、国連農業食糧機関をはじめ国際社会全体で保護がもとめられています。

ミツバチ減少の理由には、気候変動や農業の形態の変化、疫病・伝染病・寄生虫なども挙げられますが、無視できないのがネオニコチノイド系農薬。

水に溶けて植物の根からしみこむ浸透性の殺虫剤、ネオニコ系農薬は残留性がたかく、神経に作用することでハチへの毒性が強く、日本国内でも使われています。

ヨーロッパでは2013年にネオニコ系農薬のうちとくに毒性の強い3種類の使用が暫定的に禁止になりました。韓国、アメリカ、カナダでも規制が始まっていますが、日本では逆に使用が拡大し、残留基準値も緩和されています。

人間の子どもの発達にも悪影響を与える可能性を、脳神経科学者の黒田洋一郎先生も警告しています。

農薬の環境への影響が指摘された「沈黙の春」以来、当時多く使用された有機塩素系の多くは規制され、有機リン系の使用も未だ国内使用量は最多ながら減少傾向にあり、比較的少量で長く効果が持続するネオニコ系農薬が増加してきました。しかし、ネオニコの危険性がわかってきたから、また有機リン系にもどればいい、というわけではありません。

解決策は、農薬を使わない、自然の力をもっと活用した生態系農業です。

それを農家と消費者とともに実現するために、グリーンピースは活動してきています。

[写真:フランスの生態系農場]

生態系農業ってどんな農業?

集中的に単一の作物を栽培するのではなく、遺伝子的にも多様性のあるさまざまな種類の農作物を、風土や季節にあわせて育て、農家や地域に暮らす人の自己決定権を尊重し、動物や虫や微生物などあらゆる生物の多様性の力やバランスを活用し、化学農薬や合成肥料に頼らない農業です。

日本についての研究では、花粉を運ぶ生き物のうち7割が野生の生物だそうです。つまり、農業と食べ物の安全をまもるには、飼育されているミツバチだけを保護すればいいわけではありません。

生態系が破壊され、もしも花粉を運ぶこうした野生の生物までが姿を消してしまったら、人の手で受粉する以外に作物を実らせる方法がなくなります。その手間やコストははかりしれず、現実的ではありません。

[写真:ハチなどの生きものが授粉する経済価値は日本で4700億円。その7割を野生のものたちが担う]

農家も消費者もミツバチにもやさしい解決策がある

農林水産省の2016年の報告によれば、ミツバチの大量死は水田で、穂が出た時、殺虫剤をまくことでおこっています。

殺虫剤をまく目的はカメムシ退治。カメムシはおこめの粒の一部が黒く変色する「斑点米」の原因になります。

でも、ほんとうにこの農薬で効果があるのか、まく必要があるのか。

グリーンピースは河北潟湖沼研究所とボランティアの皆さんのご協力のもと、慣行農法の田んぼと、無農薬の田んぼの生態系について調べました(調査の詳細はこちらから)。

分析の結果、農薬をまいた田んぼではウンカなどカメムシの仲間の害虫が急激に増えるのに対し、無農薬の田んぼでの増加はゆるやかなこと、害虫を食べる益虫も農薬の影響を受けることがわかりました。一度の調査で簡単に結論を導くことはできませんが、河北潟湖沼研究所などでこれまでに実施してきた調査とも似た傾向がみられました。

実際に農薬の使用を減らすためには、NGOや専門家や農家だけの力だけではなく、食べ物を買うときにその背後にあることを少し考えて選んでみたり、署名したり情報を周囲に共有したりといった、誰もが日常の延長でできるひとつひとつの行動を、どれだけ多くの人ができるかということが重要です。

そうした行動が、企業が自ら行動を変えるための大きな力になります。

実際、有機農産物のニーズはのびていて、グリーンピースがはたらきかけているスーパーマーケット大手・ライフの株主総会でも、社長自ら「オーガニックに対する需要は非常に高い」と発言しています。

アメリカのファーマーズマーケットはこの10年で倍に拡大、生態系農業への投資がしやすくなる政策をうちだす国も現れました。企業の動きはさらに早く、世界第2位の乳業メーカー・ダノンが2016年にアメリカのオーガニック食品メーカーを買収するなど、オーガニックをビジネスチャンスと認識するようになっています。

いずれにせよ、現在の工業的農業を続けていては、土地は劣化し、気候変動は進行するままです(工業型の畜肉産業は世界全体のCO2排出量の約15%近くを占め、交通からの排出を超えるまでになっています)。健康のために、環境保護のために、誰もが自ら生態系農業を選ぶときがきています。

カメムシはいないのにカメムシ防除

講演後の質疑応答では、参加された方々から興味深いご意見をいくつもいただきました。

一部をご紹介します。

  • 自然農法でもカメムシがでないように管理する方法があり、実際にほとんどでていないのに、周辺ではカメムシ防除のための農薬散布が行われている。

  • 斑点米がクレームになるときいて、ためしに斑点米だけあつめて炊いてたべてみたけど、全然食べられる味だった。

  • 海外と比較すると、日本の農業はみためを綺麗にしなくてはならないことで農業自体をくるしめる構図になっている。農薬をまくことにまいている農家自身が疑問をもっている。結局は等級制度による買取価格が壁になっているのでは。

  • 生態系農業のためには、いまの農業のスタイルからかなり大きな転換が必要なため、アイルランドのように全島あげて市民と農家が一体になってとりくむくらいの助けがあれば。

  • 自然農法の作物は強いので病害虫の被害を受けにくい傾向がある。化学肥料や農薬を使用している作物は弱くなるため、病害虫の被害を受けやすいのでは。

  • 生態系農業にはまず向いている作物・品種を選ぶことから始めるべき。強い品種を選べば難しくはない。

 

消費者の行動がたいせつ

[写真:日本の有機農産物]

毎日自然と向かいあって暮らす農業関連の方々の言葉のひとつひとつには、おいしくて健康な食べ物を自分の手でつくりたい、そのために起こっている現実を知りたい、できることをしたい、という真剣な情熱があふれていました。

そんな声を、これからも届けていけたらと思っています。

いますぐ参加

グリーンピースでは農薬規制の壁になっている等級制度の廃止を求めるオンライン署名を実施中です。

むやみに農薬が使われるいまの現状を変えるために、私たちにできることがあります。ぜひ下のバナーをクリックして賛同してください。

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参考:

グリーンピースレポート「生態系農業」

グリーンピースは、政府や企業からお金をもらっていません。独立した立場だからこそできる活動で、私たちの知らないところで進む環境破壊や生態系への影響を明らかにしています。寄付という形でも一緒にグリーンピースを応援していただけませんか?

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ライター 食と農業チーム

食と農業チーム

食と農業チームです。
ミツバチを守るため、ネオニコチノイド系農薬の使用を減らすキャンペーンや、有機農家さんといっしょにオーガニック野菜の取り扱いを増やすための活動をしています。

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