ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち
ENERGY 2018.11.01

ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち

ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち

2018年10月6日にドイツ西部にあるハンバッハの森で行われた森林伐採に反対するマーチ。“We will end coal!” 「石炭の時代を終わらせるのは私たち」というメッセージを掲げたバナーと数万の人々

 

皆さんこんにちは、エネルギー担当の石川です。先日、ドイツで自然エネルギー100%の電気を供給している会社を訪問してきました。そこで発見したドイツのエネルギーと暮らしの今を、4回に分けてご紹介します!

 

ドイツ中の関心を集めた、森林「ハンビー」をめぐる事件

10月6日、ドイツ西部で石炭採掘のための森林伐採反対する、大規模なマーチがありました*1。この森は「ハンビー」との愛称で親しまれ、数年間の間、伐採に抵抗する市民と電力会社がにらみあいをつづけてきました。

当日は、5万人(主催者発表)もの人々があつまり、気候変動を悪化させ、大気汚染の原因ともなる石炭採掘に、反対の声をあげたそうです。また、同日は裁判所の森林伐採差し止め命令が前日に出たことから、お祝いムードも。

そんな盛り上がりの中、私はグリーンピースのキャンペーンから生まれたクリーンな電力会社、「グリーンピース・エナジー」に会いに、ドイツ北西部の都市ハンブルグにいました*2。

グリーンピース・エナジーって?

ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち

グリーンピース・エナジーのスタッフ(一部) (c) Christine Lutz / Greenpeace Energy

グリーンピース・エナジー社(GPエナジー)は、1998年ドイツの電力自由化後、「原発や石炭ではなく、自然エネルギー100%の電気が欲しい!」というエネルギー転換を求める市民の声に応える形で、1999年に協同組合として設立されました*3。

2001年には発電事業専門の「プラネット・エナジー」を設立し、現在までに風車13基と太陽光発電所3カ所(合計78MW)を所有しています。こうしてドイツ全土にいる約14万人超の顧客に自然エネルギー100%の電気を届けています。そのうち、ビジネス顧客は約9,900件。また、エネルギーの総合サプライヤーとして風力発電であまった電気からつくったガスに天然ガスをまぜたガス供給を約1万5,000人の顧客に届けています。

誰でも電気とガスを購入できますが、組合員になり、一定の金額(55ユーロ)を支払えば、自然エネルギー発電施設の共同所有者として、より深くプロジェクトに関わることができます。今、その組合員数は2万4,000人にものぼります。株式会社ではなく、協同組合という形を取ることで、「市民参加型」のエネルギー転換を目指しています。

 

「クリーンエネルギーの先」を求めるビジネスモデル

魅力はなんといっても、厳しい環境基準*4を実現させる、情熱を持った人々です。

GPエナジーが徹底していること。

◾️石炭ゼロ・原発ゼロを徹底(化石燃料や原発関連企業との取引もしていません)

◾️風力50%と水力50%で自然エネルギー100%を達成(2018年時点)

◾️透明性の確保(全発電所の詳細情報をオンラインで見ることができます)

◾️エネルギー転換のための政策提言

GPエナジーは電力供給ビジネスをしていますが、クリーンな電気とガスを提供するだけにとどまらず、エネルギー転換を起こすべく政府や議員に働きかけもおこなっています。100人近くになる社員たちが日々、自分のスキルとビジネスの特性を生かしエネルギー転換に挑戦しています。

 

GPエナジーを支える、多様で魅力的な人たち

ゼンケさん(中央) ニルスさん(右)(共同最高経営責任者)

ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち

(c) Greenpeace

エネルギー転換は、普通の人々が参加してはじめて成功する。風車や太陽光発電を個々が所有しているという感覚が重要だからこそ、協同組合で経営をしている

そう語ってくれたゼンケさん(写真中央)。

GPエナジーの顧客や組合員、はたまた社員であることは、エネルギー転換を一緒に起こす仲間なのだと教えてくれ、市民参加型のエネルギー転換の必要性を強く感じました。

 

マーセルさん(政策・広報担当)

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(c) Christine Lutz / Greenpeace Energy

環境をまもるビジネスが儲かるビジネスになることで、システム転換を起こせる

GPエナジーに入る前は数年間務めた雑誌編集の仕事辞め、3年間のセーリング世界旅行に行ったこともあるそう。環境をまもることビジネスモデルについて熱く語り、GPエナジーがビジネスプレーヤーとして環境保護に貢献することの重要さを教えてくれました。

 

ロマンさん(ビジネス開発担当)

ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち

(c) Christine Lutz / Greenpeace Energy

ものすごく環境を意識していたわけじゃないけれど、ソーシャルインパクトのために自分のスキルを使えるほうが気持ちがいい

GPエナジーのこれからのビジネスの方向性を説明してくれたロマンさん。もともと環境保護に関心が強かったわけではなかったけれど、エネルギー転換とビジネスの2本柱で挑戦しているGPエナジーに社会的意義を感じ入職したそう。

 

ヨハンさん(左・エネルギー調達担当)

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(c) Greenpeace

自分の子どもたちにチェルノブイリを体験させたくない

おもむろにペンを取り「じゃあ、何から描こうかな?」とニコニコしながら自然エネルギーの調達について教えてくれました。お子さんの写真や絵葉書の横に、空気の汚染度を測る機械がある個性的なオフィス。自分の子供をまもりたいとの強い想いが、GPエナジーにいる動機だと話してくれました。子連れで出社しているヨハンさんを見たインターン学生から「理想の父親像だ」と羨望の眼差しを向けられていました。 

 

ウィーバさん(顧客サービス担当)

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(c) Greenpeace

環境のために価値のあるものを売ることができる

お問い合わせや顧客とのやりとりなど、GPエナジーの窓口担当。前述の森林伐採のニュースが飛び込んでからは、新規顧客が増えたのだとか。

一見クリーンに見える他の電力会社のウェブサイトと比べ、GPエナジーのウェブサイトでは「発電所と直接やりとりができるし、情報は全て公開している」と違いを見せてくれました。以前はセールスの仕事をしていたそうですが、GPエナジーでは自分の価値に反しない仕事ができることが魅力だと教えてくれました。

マーケティング部のミンさんからは、通常のメニューに加えて、石炭が採掘される地域において、ソーラーパネルを設置し自然エネルギー転換を起こすための料金プランがあることを教えてもらいました。はじめは環境に無関心だったミンさんは、「もともと好きだった自転車が、いまは環境に意識した気持ちで自転車に乗るようになった」そうで、GPエナジーに入ってから起きた自身への変化についても話してくれました。

GPエナジースタッフの情熱やスキル、包括的なエシカル基準、エネルギーの提供だけではなく、実際に自然エネルギーを増やしていく仕掛けに、私は話を聞くたびに感動していました。

 

ドイツで見てきた市民がつくるエネルギーのかたち

グリーンピース・エナジー社とプラネット・エナジー社の入るハンブルグオフィス。グリーンピース・ドイツのオフィスも同じ建物内にあります。 (c) Greenpeace

全ての人々に共通していたのは、GPエナジーのために働いていることの誇りと、エネルギー転換を自分たちの手で起こすという信念、そして素敵な笑顔。1人1人の顔が印象に残る滞在となりました。

 

これから数回に分けて、グリーンピース・エナジー社訪問記をお送りします。乞うご期待!

 

石炭火力より自然エネルギーを!

現在、グリーンピース・ジャパンでは、東京湾の国内最大級の石炭火力発電所計画をやめ、代わりに自然エネルギーを増やすことを求める署名を集めています。あなたの声があれば、それを本当に中止させることができます。ぜひご参加ください。

*1: http://www.afpbb.com/articles/-/3192461

*2: グリーンピース・ドイツのキャンペーンがきっかけとなった生まれた会社ではありますが、グリーンピース・ドイツからは法律的・財政的にも完全に独立しています。

*3: グリーンピース・エナジー社のウェブサイト(ドイツ語だけですが、オンライン翻訳機能などで中身を見ることができます) https://www.greenpeace-energy.de/privatkunden.htm

*4: https://www.greenpeace-energy.de/privatkunden/oekostrom/greenpeace-stromkriterien.html (ドイツ語のみ)

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ライター エネルギーチーム 石川

エネルギーチーム 石川

石川せり Seri Ishikawa 
エネルギーチーム 自然エネルギー担当
3.11の経験を通して、人と環境を犠牲にしていたこれまでの生き方に気がつき、命の源である「環境」を守ることをライフワークにすると決心。エネルギーチームの一員として、魅力溢れる自然エネルギーの姿をみなさんにお届けします!

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