地域も食もまもる自然エネルギー
ENERGY 2018.04.14

地域も食もまもる自然エネルギー

こんにちは。

桜が咲き、太陽の力を感じる季節がきました。私は、ここぞとばかりに日光浴の日々です。今日は、そんな太陽の力で地域と食を守る活動をされているグリーンピースのサポーターの井上保子さんを訪問したときのお話をみなさんにお伝えしたいと思います。

井上さんは、兵庫県宝塚市で宝塚すみれ発電所を「非営利型株式会社」として運営している自然エネルギー事業者でもあるんです。「エネルギーをエネルギーだけで見ない」と語る井上さんは、気候変動対策としての自然エネルギー導入だけではなく、食と地域を守っていく役割としての自然エネルギー事業を地域の人々、自治体も巻き込みながら取り組んでいます。

                

お寺の境内に設置された発電所(第2号)についてお話する笑顔が素敵な井上保子さん
敷地のなかでは、エネルギーを作ると同時に、地域ボランティアによる緑化活動によって植物も育っています。

宝塚すみれ発電の発電所があるのは主に、宝塚市内と、宝塚市北西部に位置する人口約2,500人の西谷地区です。実はこの西谷地区、環境省の定める「生物多様性保全上重要な里地里山」に選ばれるほど、豊かな自然があるところです*1。

「原発に頼らない暮らしがしたい」

もともと食べ物の共同購入など食を守る活動をされていたという井上さん。東電福島第一原発事故が起きたときには、チェルノブイリ原発事故で得た情報を、発信し続けていたそうですが、「原発に頼らない暮らしをするには多くの人を巻き込んで、クリーンなエネルギーを地産地消すれば良いのでは?」という思いにいたったそうです。そして、2012年、市民が出資し、売電益を出資者に還元するという形をとって、野立てのソーラーパネルを使った太陽光発電所が完成!  現在では、宝塚市と連携した発電所や、パネルの下で農業をおこなうソーラーシェアリングの発電所にいたるまで活動が広がっています。

宝塚すみれ発電所第4号のソーラーシェアリング
 

ソーラーシェアリングで地域も食も守る

西谷地区は「農業者の高齢化や後継者不足により、耕作放棄地となる恐れのある土地が増えていて、こうした土地は、企業買収や遺伝子組み換え作物導入*2の対象となる可能性がある」そうです。そこで解決策として見出したのが、ソーラーシェアリング事業でした。固定価格買取制度が適用される20年間は売電による収入が確保され、新規就農者を呼び込みやすい、といった農業と発電の新しい形です。

最初は「新しいことだからよく分からない」「田畑に柱を立てたくない」という声が上がったそうです。でも井上さんは、ソーラーシェアリングの重要さをわかってもらうために何回も足を運び、説明を繰り返し、導入に納得してもらいました。

※「固定価格買取制度(FIT制度)」とは、自然エネルギーで発電された電力を国が定めた価格で一定期間電気事業者が買い取ること。自然エネルギーを促進するための制度です。

発電所見学の当日は、ほかにも西谷自治会連合会会長の西田均さん、西谷地区の地主兼農家であり、現在は西谷ソーラーシェアリング協会代表理事の古家義高さんにもお会いすることができました。

市民農園「KOYOSHI農園」の前で(左からグリーンピース石川、古家さん、西田さん、井上さん)
 

■地域との連携

自治会と地主という強い味方をつけたすみれ発電のソーラーシェアリングは、市民農園の上でも行われています。

農園は、市民の利用のみならず、地域の大学とも連携し、大学生が栽培や収穫に参加する取り組みも行われています。さらには、地域の学習塾経営者が関心を持ち、子供たちに農業体験をさせる、地域の百貨店がソーラーシェアリングの野菜を仕入れるといったうれしい広がりも! ちなみに、ソーラーシェアリングのもとで作られている野菜は、無農薬・自然栽培です。

■行政との連携

 地域での自然エネルギーの拡大には、行政との連携も欠かせません*3。行政から与えられる「補助金」ではなく、事業者が事業をよりしやすい「無利子の融資」をもとめ、兵庫県とも交渉をしてきたそうです。事業が始まれば、貸付金は返済可能であり、エネルギーの自給という便益が地域にもたらされるWin-Winの関係が生まれますよね井上さんたちの働きかけの結果、兵庫県の支援*4は無利子(貸付20年)に! さらに、行政が管理する土地や建物にも太陽光パネルを導入しています。

※宝塚市は2050年まで自然エネルギー自給率を50%にするという「宝塚市エネルギー2050ビジョン」を策定しています
 

パネルがあっても収穫の減収はなし!

ソーラーシェアリングは、発電事業ではなく、あくまでも農地を借りているので「営農が適切に行われていること」が必須条件です。それを証明するために、毎年収穫量を報告しなければいけない決まりがあるため、市民農園の栽培はさつまいもにしぼって行われています。気になる収穫量ですが……地域の平均反収と比較して、減収なし!(2016年)*5。

さつまいもが生い茂るKOYOSHI農園とソーラーシェアリングの様子。支柱は、土に打ち込む際に1本になる方式を採用(出典:西谷ソーラーシェアリング協会HP)

ほかにも、水田の上にパネルをつける形も。

左:水田とソーラーシェアリング 
右:稲刈りの様子。耕作機も入れる間隔と高さはきちんと保たれています。 こちらもパネル設置による減収ゼロだそうです *5
(出典:西谷ソーラーシェアリング協会HP) 

「目の前にある資源を有効活用しないと」

井上さんと宝塚すみれ発電の挑戦は、ソーラーシェアリングだけにとどまりません。西谷地区にいる800頭ほどの牛の糞尿からバイオマス発電ができないか考えているそうです。地域住民が糞尿のにおいにずっと悩まされてきたことを聞き、におい問題も自然エネルギー拡大も一挙におこなえるバイオマス発電という発想です。太陽光も糞尿もまさに目の前にある「資源」ですよね。それを利用しない手はないと、地域を元気にするために、しかも楽しく実現するのが井上さんたちの魅力だと思いました。

自然エネルギーをつかって、どんどん人をつなげ、地域をまもり、元気にしていく井上さん。環境に優しく安全なだけではない、自然エネルギーの新たな魅力を井上さんと宝塚の皆さんが教えてくださいました。

わたしたちの訪問後、宝塚すみれ発電所がつくった自然エネルギーの電気が、コープでんきから買えるようになったというニュースが届きました。自然エネルギーを自宅や事業所の電気として自由に選べるようになったいま、地産地消でクリーンな電気をつくる人を応援する気持ちで電力会社を選ぶのもいいですよね。電力会社選びには、パワーシフト・キャンペーンのウェブサイトもご参考にしてください*6。

井上さんとコープこうべの担当者は、数年前から一緒に何かやりたいと話していたそうで、「やりたいことを口に出すと実現できていく」という井上さんの言葉通りになりました。

一緒に見学へ行ったグリーンピースのスタッフの安藤(グラフィックデザイン担当)の手記 

エネルギーと食のことが合体している一石二鳥なソーラーシェアリングに興味を持ち、井上さんの個性にも惹かれ、晴れて見学がかないました!

井上さんのおすすめするソーラシェアリングのパネルの形をみて、「影が可愛い、日本庭園ぽい」と感じました。この影で農作物が太陽の強すぎる日差しから距離を保つことができ、農業される方たちの疲労も軽減されるとのこと、台風にも強い形だそうです。

今回の見学では、ソーラーシェアリングは一石二鳥、に収まらない要素があるのではないか、良い影響は地域におさまらず現代人のライフスタイルを考える機会になるのではないかと思いました。

左:宝塚すみれ発電所第4号のソーラーシェアリング
右:西谷ソーラーシェアリング協会6号基

 

左:お手製の笛を聞かせてくださる古家さん  
右:楽器収集が趣味のようでお部屋にはたくさんのめずらしい楽器が!
左:井上さんのお手製の桜の塩漬けおにぎりと、おかずたち。すべて顔の見える生産者がつくってくださった野菜たちだそうです。季節を感じる昼食をおいしくいただきました。
右:実は、すみれ発電第1号は、古家さんのご自宅の庭から始まったのです!


井上さんは「おいしいこと」を大事にされながら活動されています。「こういう暮らしをしたいために、いろいろと活動をしている」と普段のパワフルな活動のイメージとは少し違った印象のお話聞きました。自然エネルギーの推進や酪農・農業をまもるための活動の源は、暮らしの中から生まれたとてもシンプルな動機からでした。

仲間と建てたコーポラティブハウス(マンションや共同住宅などを住民が共同購入する形式)に暮らす井上さん。壁面は漆喰、キッチン家具の木面には漆塗りにすることで余計な湿気を吸ってくれ、エアコンなしでも年中快適だそうです! 断熱もきちんと行うことで、冷える夜でも暖房器具はストーブ1つでした。
見学を終えたあと、井上さんのご自宅にご招待いただきました。お弁当に続き、感動的なおいしい体験。サイフォンで入れていただいたコーヒー、こだわりの牛乳は濃厚なアイスクリームのような味がします(井上さんは兼ねてから酪農を守るため、牛乳作りの活動を約30年つづけられています)。
 
 

「安全な環境と安心できる食べ物で生活する」そういう当たり前だけど現代人にはむずかしい「丁寧な暮らし」を意識して毎日を過ごしたいです。


Greenweek!  ヤマナシヘムスロイド x グリーンピース・ジャパン

グリーンピースでは4月14日〜5月5日まで「丁寧な暮らし」から環境について考える「グリーン・ウィーク」を開催します!(詳細はこちらのブログに)

4月27日(金)14時からは「地球カフェ」と題し、これまで地球環境を守るために行われてきた市民活動やグリーンピースのキャンペーン紹介、そして参加者の皆さんと一緒に、日々の暮らしでできることを考える時間を予定しています。ぜひお越しください!

【詳細・申込はこちら】 *FBイベントはこちら

 

Greenweek!詳細

Greenweek!  ヤマナシヘムスロイド x グリーンピース・ジャパン

【期間】4月14日〜5月5日(11:00~17:00、日曜定休、祝日は16時まで)

【会 場】オープン時間 11:00-17:00 ヤマナシヘムスロイド http://yhi1971.org/

    東京都港区北青山1-5-15 (青山1丁目駅1番出口より徒歩数分)


*1:宝塚市HP
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/kankyo/kankyoseikatsu/1014015/1014926.html
 
*2:(参考)グリーンピースEUのレポート『遺伝子組み換え失敗の20年〜遺伝子組み換え作物をめぐる7つの『神話』と現実〜』日本語版
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/gmo20yrs_jp.pdf
 
*3:宝塚市エネルギー2050ビジョン
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/kankyo/energy/1014261/1010471.html
宝塚市は、「自然エネルギー100%プラットフォーム」でも100%宣言をしています
 
*4:兵庫県「地域創生!再エネ発掘プロジェクト」
https://web.pref.hyogo.lg.jp/press/20180306_1811e50a47818cbc4925824800063c00.html
 
*5:西谷ソーラーシェアリング協会HP
http://userweb.vc-net.ne.jp/koyosi/solor.html
 
*6:グリーンピース・ジャパンはパワーシフト・キャンペーンの運営団体です

 

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ライター エネルギーチーム 石川

エネルギーチーム 石川

石川せり Seri Ishikawa 
エネルギーチーム 自然エネルギー担当
3.11の経験を通して、人と環境を犠牲にしていたこれまでの生き方に気がつき、命の源である「環境」を守ることをライフワークにすると決心。エネルギーチームの一員として、魅力溢れる自然エネルギーの姿をみなさんにお届けします!

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